物流・運送会社におけるCRMとは、荷主の基本情報や商談、見積もり、取引条件、問い合わせ対応の履歴を一元管理し、荷主との関係づくりと営業活動に生かす仕組みです。CRMの効果を高めるには、営業情報だけでなく運行データとあわせて、荷主ごとの取引実態を把握できる体制を整えることが重要です。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、日報・配車・請求のデータを荷主別に蓄積し、待機・附帯時間の自動計算や分析レポートによって、荷主交渉の根拠となるデータの可視化を支援します。鋼材・重量物輸送の現場で培ったノウハウを生かし、セミオーダー型カスタマイズで自社の運用に合わせた導入が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
1.物流におけるCRMとは|荷主管理が重要になる背景

物流・運送会社にとってのCRMは、荷主との取引関係を情報として蓄積し、営業・見積もり・交渉の質を高めるための仕組みです。取引条件の明確化が法律で求められるようになったことで、荷主情報を体系的に管理する必要性が高まっています。
(1)CRMとは
CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客との関係を管理し、長期的な取引と収益の向上につなげる考え方、またはそれを実現するためのシステムです。顧客の基本情報に加え、商談の進捗、問い合わせやクレームの対応履歴、過去の取引内容を一元管理し、部署や担当者の間で共有します。
物流・運送会社の場合、主な顧客は荷主であり、荷主ごとの取引条件や運送実績、担当者とのやり取りを組織として把握することがCRMの中心的な役割になります。
(2)運送会社で荷主管理が重要になっている背景
2024年4月にトラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用され、運送会社はドライバー1人あたりの稼働時間が限られる中で利益を確保しなければならなくなりました。採算の合わない取引や、長時間の荷待ちが発生する取引を見直すには、荷主ごとの取引条件と実態を正確に把握することが前提になります。
2025年4月に施行された改正貨物自動車運送事業法では、真荷主とトラック事業者が運送契約を結ぶ際に、運送の内容と対価、荷役作業や附帯業務の内容と対価、燃料サーチャージなどの料金を記載した書面を交付することが義務付けられました。交付した書面は、写しを1年間保存する必要があります。
荷主ごとの契約条件や附帯業務の内容を正確に管理し、変更があった際に漏れなく反映するためにも、荷主情報を一元管理する仕組みの重要性が増しています。
参考:https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000343929.pdf
参考:https://www.logi-today.com/932126
(3)「CRM物流」は通販のファン化施策を指す場合もある
「CRM物流」という言葉は、通販・EC事業者が出荷する商品に手紙やサンプルなどの同梱物を加え、購入者との関係を深める物流施策を指す場合もあります。この場合のCRMは、主に通販事業者と消費者の関係づくりを意味します。本記事では、運送会社・物流会社が荷主との取引を管理するためのCRMを中心に解説します。
2.物流・運送会社がCRMで管理すべき情報

物流・運送会社がCRMで管理すべき情報は、荷主の基本情報、取引条件、商談・見積もりの履歴、対応履歴、取引実績の5つに整理できます。一般的な営業管理の項目に加え、運送業特有の条件を管理できるかどうかが活用の成否を分けます。
| 情報の種類 | 主な管理項目 |
|---|---|
| 荷主の基本情報 | 会社名、担当者と連絡先、決裁者、拠点・発着地、取扱品目 |
| 取引条件 | 運賃・料金体系、附帯業務の内容と料金、燃料サーチャージ、支払条件、契約更新時期 |
| 商談・見積もり | 新規案件の問い合わせ、見積もり内容と提出日、受注・失注の結果と理由 |
| 対応履歴 | 打ち合わせ記録、要望、クレームと対応内容、運賃改定の交渉経緯 |
| 取引実績 | 月別の売上、運行回数、荷待ち・附帯作業の時間、積載率 |
(1)荷主の基本情報
荷主の基本情報では、会社名や担当者の連絡先に加え、発着地の拠点、取扱品目、荷姿、使用する車種などを管理します。担当者だけでなく決裁者や物流部門の責任者を把握しておくと、運賃改定や取引条件の見直しを提案する際に、話を通すべき相手を判断しやすくなります。
(2)取引条件
取引条件は、運送会社のCRMで特に重要な管理項目です。運賃の計算方法、附帯業務の内容と料金、燃料サーチャージ、高速道路利用料の扱い、支払条件、契約の更新時期などを荷主ごとに記録します。
改正貨物自動車運送事業法による書面交付の義務を踏まえ、契約書や交付した書面の保管場所と交付日もあわせて管理しておくと、条件の確認や更新漏れの防止に役立ちます。
(3)商談・見積もりの履歴
新規案件の問い合わせから見積もり、受注・失注までの経過を記録します。失注した案件の理由を蓄積しておくと、運賃水準や対応エリア、車両の不足など、自社の弱点を把握できます。
(4)対応履歴
荷主との打ち合わせ内容や要望、クレームとその対応を記録します。営業担当者、配車担当者、ドライバーがそれぞれ受けた情報を1か所に集めることで、担当者の異動や退職があっても荷主との関係を引き継げる状態をつくれます。
(5)取引実績
荷主ごとの売上や運行回数、荷待ち・附帯作業の時間、積載率などの実績は、取引の採算を判断する材料になります。これらの数値は運行管理システムや請求データから取り込むことで、手入力の負担を抑えながら最新の状態を保てます。
3.物流・運送業でCRMを導入するメリット

物流・運送業でCRMを導入する最大のメリットは、荷主との取引を担当者個人ではなく組織の情報として管理できるようになることです。その結果、営業活動の効率化だけでなく、運賃交渉や取引の見直しを根拠をもって進められるようになります。
(1)荷主情報の属人化を防げる
運送会社では、荷主との関係が特定の営業担当者や配車担当者の経験に依存しているケースが少なくありません。担当者しか知らない取引条件や要望があると、休暇や異動の際に対応が滞り、荷主の信頼を損なうおそれがあります。
CRMで荷主情報と対応履歴を共有すれば、誰が対応しても同じ情報をもとに判断できるようになり、担当者の交代による関係の断絶を防げます。
(2)見積もり・商談の対応が早くなる
過去の見積もり内容や類似案件の条件をすぐに参照できるため、新規の問い合わせに対する見積もりの作成時間を短縮できます。商談の進捗を一覧で管理すれば、フォローが漏れている案件や、回答期限が迫っている案件も把握しやすくなります。
(3)荷主ごとの採算を把握し、運賃交渉に生かせる
取引条件と取引実績を荷主ごとに管理すると、売上に対して荷待ちや附帯作業に多くの時間を取られている荷主や、積載率の低い取引を特定できます。
荷待ち時間や附帯作業の実績を数値で示すことで、運賃や附帯料金の改定、荷待ち時間の削減を荷主に要請する際の説得力が高まります。改正物流効率化法により、荷主にも荷待ち時間や荷役等時間の短縮に取り組む努力義務が課されているため、データに基づく協議は荷主にとっても対応しやすい提案になります。
(4)取引の偏りを把握し、営業戦略を立てやすくなる
売上の多くを少数の荷主に依存していると、取引条件の悪化や取引の終了が経営に大きく影響します。荷主別・業種別・エリア別の売上構成をCRMで可視化すれば、依存度の高い取引のリスクや、開拓すべき業種・エリアを判断しやすくなります。
帰り便の空きや車両の稼働状況と組み合わせて分析すれば、空車を減らせる新規荷主の開拓にもつなげられます。
4.物流・運送会社向けCRMの主な機能と選び方
物流・運送会社がCRMを選ぶ際は、一般的な営業管理機能に加えて、運送業特有の取引条件を管理できる柔軟性と、運行管理・請求データとの連携性を重視することが重要です。高機能な製品でも、現場で入力されなければ効果は出ません。
(1)CRMの主な機能
物流・運送会社で活用される主な機能は次のとおりです。
| 機能 | 内容 | 運送会社での活用例 |
|---|---|---|
| 顧客管理 | 荷主の基本情報、担当者、拠点を登録・検索 | 発着地や取扱品目ごとの荷主の抽出 |
| 商談管理 | 案件の進捗、見積もり、受注・失注を管理 | 新規案件の見積もり状況の一覧化 |
| 活動履歴管理 | 訪問、電話、メールなどの対応記録 | 運賃改定の交渉経緯の共有 |
| 問い合わせ・クレーム管理 | 問い合わせの受付から対応完了までを管理 | 遅延や破損の連絡への対応状況の把握 |
| レポート・分析 | 売上や商談の状況をグラフや表で集計 | 荷主別・エリア別の売上構成の可視化 |
| 外部連携 | 他システムとのデータ連携 | 運行管理システムや請求データの取り込み |
(2)運送業特有の項目を自由に設定できるか
汎用的なCRMは小売業やサービス業を前提に設計されているものが多く、運賃体系や附帯業務、発着地、車種といった運送業特有の項目が標準で用意されていない場合があります。管理項目を自社で追加・変更できるかを確認し、自社の取引条件をそのまま登録できるかを試しておくことが重要です。
(3)運行管理システムや請求データと連携できるか
CRMに取引実績を手入力する運用では、入力の手間がかかるうえに、数値の更新が遅れがちになります。運行管理システムや請求・会計システムとデータを連携できれば、荷主ごとの売上や運行回数、荷待ち時間を自動で反映でき、営業と現場が同じ数値をもとに議論できます。
連携の方法には、API連携やCSVファイルの取り込みなどがあります。既存システムとの連携実績や、連携に追加費用がかかるかどうかも事前に確認します。
(4)現場で使いやすいか
営業担当者だけでなく、配車担当者や事務担当者が入力・参照する場合は、操作のわかりやすさが定着を左右します。外出先からスマートフォンで荷主情報を確認・更新できるか、入力項目が多すぎないかを、無料トライアルなどで実際の担当者に試してもらうと判断しやすくなります。
(5)自社の規模に合った費用か
CRMの多くは、利用するユーザー数に応じて月額料金がかかるクラウド型です。利用人数や必要な機能を整理したうえで、初期費用と月額費用、カスタマイズや連携にかかる費用を含めた総額で比較します。
5.物流・運送会社がCRMを導入する手順と運行管理システムとの連携

CRMの導入は、目的と管理項目を決めたうえで小さく始め、運行管理システムなどの業務データと段階的につなげていく進め方が効果的です。最初から全機能を使おうとすると、入力の負担が大きくなり定着しません。
(1)導入の目的と管理する項目を決める
最初に、CRMで何を実現したいのかを明確にします。「見積もりの対応を早くしたい」「荷主ごとの採算を把握して運賃交渉に生かしたい」など、目的によって管理すべき項目や必要な機能は変わります。
目的が決まったら、2章で整理した情報のうち、どの項目を誰が入力するかを決めます。最初は必須項目を絞り、運用が定着してから項目を増やす方が現場の負担を抑えられます。
(2)既存の荷主データを整理して移行する
Excelや名刺、紙の台帳に分散している荷主情報を集め、重複や表記の揺れを整理したうえでCRMに登録します。会社名の表記や拠点名の付け方を統一しておくと、後から荷主別の集計や運行データとの突合がしやすくなります。
(3)運行管理システム・請求データと連携する
CRMは荷主との関係や営業活動を管理するシステムであり、配車や運行の管理そのものは運行管理システムに任せるのが基本的な役割分担です。そのうえで、荷主コードなどの共通キーを使って両者のデータをつなぐと、営業情報と運行実績を荷主単位で一体的に把握できます。
| システム | 主に管理する情報 |
|---|---|
| CRM | 荷主の基本情報、取引条件、商談・見積もり、対応履歴 |
| 運行管理システム | 配車、運行実績、日報、荷待ち・附帯作業の時間、ドライバーの労働時間 |
| 請求・会計システム | 荷主別の売上、請求、入金 |
運行管理システムで記録した荷待ち時間や附帯作業の時間を荷主別に集計し、CRMの取引条件と照らし合わせれば、契約上の条件と実態のずれを具体的な数値で示せます。運賃改定や附帯料金の請求を協議する際の根拠として活用できます。
(4)運用ルールを定めて定着させる
入力のタイミングや担当者、情報の更新頻度を運用ルールとして定めます。例えば、荷主との打ち合わせ後は当日中に記録する、運賃改定の交渉経緯は必ず記録するといったルールを設け、定例の営業会議でCRMの画面を使って進捗を確認すると、入力の習慣が定着しやすくなります。

6.物流・運送会社がCRMを導入する際の注意点

CRM導入で失敗しやすいのは、CRMに役割以上のことを求めたり、入力が一部の担当者に偏ったりするケースです。導入前に役割と運用体制を明確にしておくことで、形だけのシステムになることを防げます。
(1)CRMで配車・運行管理まで行おうとしない
CRMは営業活動と荷主との関係を管理するためのシステムであり、配車計画や運行実績、ドライバーの労務管理を前提に設計されていません。CRMの項目を増やして配車表や日報の代わりにしようとすると、機能が不足して現場の業務が回らなくなります。
営業・荷主管理はCRM、配車・運行・労務管理は運行管理システムという役割分担を明確にし、必要なデータを連携させる設計にすることが重要です。
(2)入力の負担を一部の担当者に集中させない
営業担当者だけに入力を任せると、配車担当者やドライバーが受けた荷主の要望やクレームがCRMに残りません。一方で、全員に多くの項目を入力させると負担が大きくなり、入力されない項目が増えます。
誰がどの情報を入力するかを役割ごとに決め、運行実績など他システムにある情報は連携で取り込み、手入力を最小限にすることが定着のポイントです。
(3)荷主情報の取り扱いルールを定める
CRMには荷主の担当者の氏名や連絡先、取引条件など、社外に漏れてはならない情報が集まります。利用者ごとの閲覧・編集権限を設定し、退職者のアカウントを速やかに停止するなど、情報の取り扱いルールを定めておく必要があります。
(4)導入効果を測る指標を決めておく
導入後に効果を検証できるよう、見積もりの回答にかかる日数、新規案件の受注率、運賃改定を実施した荷主数など、CRMの導入目的に沿った指標を事前に決めておきます。定期的に数値を確認し、使われていない機能や入力されていない項目を見直すことで、自社に合った運用に改善できます。
7.まとめ
物流・運送会社のCRMは、荷主の基本情報や取引条件、商談・見積もり、対応履歴を一元管理し、荷主との関係づくりと営業活動に生かす仕組みです。改正貨物自動車運送事業法により取引条件の明確化が求められる中、荷主情報を組織として管理する重要性は高まっています。
CRMの効果を最大化するには、営業・荷主管理はCRM、配車・運行・労務管理は運行管理システムという役割分担を明確にし、両者のデータを荷主単位でつなぐことが重要です。運行実績と取引条件を照らし合わせることで、運賃や附帯料金の交渉を根拠のあるものにできます。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、ドライバーがスマートフォンで入力した動静情報をもとに、待機・附帯時間を自動で計算して日報や請求と連結し、荷主別の運行実績を荷主交渉に使えるデータとして蓄積します。荷主管理の強化や運行管理業務の効率化をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

