実運送体制管理簿は、2025年4月1日に施行された改正貨物自動車運送事業法により、元請事業者に作成・保存が義務付けられた帳簿です。
本記事では、制度の概要と対象事業者、記載・保存の要件、Excel雛形の入手先、具体的な書き方、Excelで運用する際の実務ポイントを順に解説します。
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1.実運送体制管理簿とは|制度概要・義務化の背景・対象事業者を整理

ここでは、実運送体制管理簿の定義、制度が導入された背景、義務化の時期を整理します。
(1)実運送体制管理簿とは何か
実運送体制管理簿とは、真荷主から運送を引き受けた元請トラック事業者が、実際に運送を行う体制を記録する帳簿です。改正貨物自動車運送事業法に基づく制度対応として作成が義務付けられています。
運送契約や配車の情報をもとに、案件ごとに実運送の体制を記録するため、自社が管理簿の作成主体に該当するか、既存の配車管理と別に何を記録する必要があるかを確認する必要があります。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000014.html
(2)実運送体制管理簿の作成が必要になった理由
トラック運送業界では、元請から一次請け、二次請けへと再委託が重なる構造が常態化しており、荷主や元請事業者が実運送の担い手を把握できていないケースが課題とされてきました。
下請階層が深くなるほど実運送事業者の収受する運賃は減少しやすく、適正な運賃収受やドライバーの労働条件改善を妨げる要因と指摘されています。そこで、再委託の状況と請負階層を帳簿上で可視化し、取引の透明性を高める仕組みとして管理簿の作成が義務化されました。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001865381.pdf
(3)いつから義務化されたのか
実運送体制管理簿の作成義務は、2025年4月1日に施行されました。施行日以後に行われる対象運送から、管理簿の作成・保存への対応が必要です。
2026年4月1日からは、貨物利用運送事業者にも実運送体制管理簿の作成義務等が新たに課されています。自社がトラック事業の許可と利用運送の登録の両方を持つ場合や、利用運送事業者として真荷主から運送を引き受けている場合は、現行制度での自社の義務範囲を改めて確認する必要があります。
参考:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/kaiseijigyoho/text2025.pdf
2.実運送体制管理簿の作成義務の対象事業者と例外対象

すべての運送事業者、すべての運送が対象になるわけではないため、対象範囲の正確な理解が実務対応の出発点になります。
(1)作成義務がある事業者
実運送体制管理簿の作成義務を負うのは、原則として、真荷主から直接運送を引き受けた元請事業者です。
荷主、元請、下請、実運送事業者という関係の中で、管理簿の作成主体はあくまで元請事業者であり、下請事業者や実運送事業者には作成義務はありません。ただし、下請側の各事業者には、元請事業者が管理簿を作成できるよう、実運送事業者に関する情報を通知する義務が課されています。
制度施行当初の作成主体は貨物自動車運送事業者である元請事業者(貨物軽自動車運送事業者を除く)でしたが、2026年4月1日以降は貨物利用運送事業者が真荷主から運送を引き受ける場合にも作成義務が及びます。企業担当者は、自社の取引ごとに、真荷主から直接引き受けている立場かどうかを確認し、元請に該当する案件を洗い出す必要があります。
なお、作成義務の対象となるのは、真荷主から引き受けた貨物の運送が1件あたり1.5トン以上であり、かつその運送の全部または一部について他の事業者による運送(利用運送)を行う場合です。1.5トン未満の貨物のみを扱う運送、または全量を自社で完結させる運送は対象外となります(詳細は2.(2)参照)。荷主企業にとっては、自社の発注ロットが1.5トンの基準に該当するかどうかが、取引先の運送会社に管理簿作成の負荷が生じるかどうかの分かれ目になります。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001865381.pdf
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001993961.pdf
(2)対象外となるケースはあるか
自社がすべて実運送する場合など、管理簿の作成が不要となるケースは存在します。前述のとおり、元請事業者が下請に出さずに自社のみで運送を完結させる案件は対象外です。また、真荷主からではなく他の運送事業者から引き受けた運送(自社が下請の立場となる運送)についても、自社に作成義務はありません。
一方で、対象か否かの判定を担当者の個別判断に委ねると、本来作成すべき案件の漏れが生じるリスクがあります。企業担当者は、対象・対象外の判定基準を社内で文書化し、受注時点で機械的に振り分けられる運用を整備する必要があります。
判断に迷うケースは、国土交通省が公表している改正貨物自動車運送事業法Q&Aで確認する方法が有効です。
実務上判断に迷いやすいのが、1回の運送依頼で複数の配達先(荷受人)がある場合です。1つの運送契約に基づく配送であれば、配達先ごとの重量ではなく、運送依頼全体の重量(合計1.5トン以上か)で判定します。一方、配達先ごとに別々の運送契約を締結している場合は、契約ごとの重量で判定するため、同じ荷量でも契約の結び方によって対象・対象外が変わる点に注意が必要です。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001993961.pdf
3.実運送体制管理簿で何を記録・保存するのか

記載・保存・提示という3つの要件を満たして初めて制度対応が完了するため、作成方法だけでなく保存・開示の運用まで含めて確認することが重要です。
ここでは、管理簿に記載が必要な項目、保存期間と保存方法、荷主からの閲覧請求への対応を解説します。
(1)記載が必要な主な項目
実運送体制管理簿に記載が必要な項目は、実運送事業者の商号または名称、実運送事業者が運ぶ貨物の内容、実運送を行う運送区間、実運送事業者の請負階層です。これらは法令上、記載が義務付けられた事項であり、どの様式を使う場合でも省略できません。
貨物の内容は貨物の種類等を、運送区間は発地と着地を、請負階層は当該実運送事業者が元請から見て何次請けに当たるかを示します。複数の実運送事業者が関与する案件では、事業者ごとにこれらの情報を対応させて記載する必要があります。
参考:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/kaiseijigyoho/text2025.pdf
(2)保存期間と保存方法
実運送体制管理簿は、運送を完了した日から1年間保存しなければなりません。保存場所は営業所とされており、案件ごとの管理簿を運送完了日と紐付けて管理する必要があります。
保存方法について、紙での保存に限定されず、電磁的記録による作成・保存が認められています。国土交通省のQ&Aでも、検索や管理の容易性の観点から電磁的記録による作成・保存は有効とされており、Excelファイルでの管理は制度上問題ありません。
注意点は、保存期間の起算日が契約日や請求日ではなく運送完了日である点です。Excelで管理する場合は、運送完了日を必ず記録項目に含め、保存期限を判定できる状態にしておく必要があります。
また、ファイルの誤削除や上書きにより保存義務を果たせなくなる事態を避けるため、保存先フォルダの管理ルールもあわせて整備します。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001993961.pdf
(3)荷主からの閲覧請求への対応
真荷主は、元請事業者に対して実運送体制管理簿の閲覧・謄写を請求できます。元請事業者には、管理簿を作成・保存するだけでなく、請求があった際に提示できる状態で管理することが求められます。また、国への定期的な提出義務はありませんが、監査やトラック・物流Gメンによる調査等で求めがあった場合には提出が必要です。
作成はしたものの、どのファイルがどの案件の管理簿か分からない状態では、実質的に請求へ対応できません。
Excelで管理する場合は、荷主名や運送日で該当案件を検索できるファイル構成にし、閲覧請求や調査の際に速やかに出力・提示できる形を整えておく必要があります。ファイル名の命名規則や案件一覧シートの整備は、この提示要件を満たすための基本的な対応です。
荷主企業側の視点では、閲覧・謄写請求権は、委託した運送が実際に誰の手でどこまで再委託されているかを把握し、下請階層の適正化や運賃の妥当性を確認する手段として位置づけられています。請求に決まった様式はないため、まずは運送会社に直近案件の管理簿の提示を依頼し、記載内容(実運送事業者名・請負階層)が受発注時の想定と一致しているかを確認するところから始めるのが現実的です。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001993961.pdf
4.実運送体制管理簿のExcel雛形・テンプレートの入手先

ここでは、実運送体制管理簿のExcel雛形やテンプレートの入手先を整理します。
(1)国土交通省の参考様式はどこで入手できるか
国土交通省の参考様式は、同省Webサイトの改正貨物自動車運送事業法のページから入手できます。同ページには、実運送体制管理簿を含む各種様式例のほか、制度の概要資料、改正貨物自動車運送事業法Q&A、関係法令の条文が掲載されています。
同ページのうち、実運送体制管理簿の様式例と改正貨物自動車運送事業法Q&Aの2点を最初に確認し、自社の様式設計の土台とすることが実務的です。
(2)トラック協会などが公開しているExcel雛形
全日本トラック協会や各都道府県のトラック協会では、実運送体制管理簿の様式例をExcel形式で公開しています。地方協会の様式は会員向けページに掲載されている場合があるため、非会員企業は全日本トラック協会または国土交通省の様式を優先的に参照することをおすすめします。
全日本トラック協会のページには、国土交通省説明会資料に基づく参考様式のほか、運送申込書・運送引受書のひな形など、改正法対応に必要な関連様式もまとめられている場合もあります。
参考:https://jta.or.jp/member/kaisei_jigyoho/top/jigyoho.html
参考:https://santokyo.or.jp/members/format/
5.実運送体制管理簿の書き方|Excelにどう記入するか

ここでは、Excelの管理簿に実際に記入する際の考え方を、運送区間、請負階層、実運送事業者名・貨物内容、固定的な下請構造がある場合の4つの観点から解説します。
(1)運送区間はどのように書くか
運送区間は、発地と着地を記載するのが基本であり、実運送事業者が1社であれば、その事業者の担当区間として発地・着地を1行で記載する形になります。
Excelでの記入時は、発地と着地を別の列に分けておくと、後から荷主別や区間別に抽出しやすくなります。
(2)請負階層はどのように整理するか
請負階層は、実運送事業者が元請事業者から見て何次請けに当たるかを示す項目であり、実運送事業者ごとに1次請け、2次請けといった階層を対応させて記載します。元請、一次請け、二次請けという委託の連鎖を、管理簿上では階層の数値として表現する形です。
再委託が重なっている場合は、委託の経路をたどって各実運送事業者の次数を確認します。元請が直接委託した事業者が実運送を行えば1次請け、その事業者がさらに委託した先が実運送を行えば2次請けとなります。
委託経路の途中に利用運送事業者が入る場合も、通知される情報をもとに実運送事業者の階層を特定します。
請負階層は、実際にトラックが走行した順番ではなく、真荷主と元請事業者の間で運送契約が締結された後、運送契約が何回結ばれたかによってカウントされます。マッチングサービスを介した場合、そのマッチング事業者が第一種貨物利用運送事業者として契約主体となっていれば階層にカウントされ、契約主体とならない仲介のみの場合はカウントされません。
階層の判定を可能にするため、改正法では下請側の各事業者に対し、実運送事業者に関する情報の通知義務が課されています。企業担当者は、下請から通知された情報のうち請負階層に関する部分を管理簿へ正確に転記し、実運送事業者と階層が1対1で対応しているかを確認する必要があります。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001865381.pdf
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001993961.pdf
(3)実運送事業者名・貨物内容はどう記載するか
実運送事業者名は、実際に運送を行う事業者の商号または名称を正式名称で記載します。通称や略称ではなく、登記上の商号で記載することで、閲覧請求や調査の際に事業者を特定できる状態を保ちます。
これらの情報の多くは、下請事業者からの通知に基づいて元請事業者が転記します。転記時の確認ポイントは、通知された商号が正式名称か、貨物内容が受注時の情報と整合しているか、通知内容と管理簿の記載が一致しているかの3点です。
通知が来ない、または内容に不備がある場合も、元請事業者には実運送事業者と請負階層の把握に取り組むことが求められるため、下請への確認手順をあらかじめ決めておく必要があります。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001993961.pdf(問4-16)
(4)固定的な下請構造がある場合の管理方法
毎回同じ請負構造で運送するケースでは、運送ごとに管理簿を新規作成する必要はありません。元請事業者が真荷主から運送を引き受ける時点で、元請から実運送事業者に至る一連の委託関係が明らかになっている場合、体制が固定化している間は一度作成した管理簿を継続利用できます。
Excelで継続管理する場合は、固定構造の案件を体制マスタとして1シートにまとめ、実運送事業者や請負階層に変更があった日付と変更内容を記録できる形にしておくと、体制の変遷を追跡できます。
6.Excelで実運送体制管理簿を運用する際の実務ポイント

ここでは、Excelで管理簿を運用する際に押さえるべき実務上のポイントを解説します。
(1)配車表・受発注情報とどうひも付けるか
実運送体制管理簿は、単体で作成するのではなく、配車表や受注情報と対応づけて管理する必要があります。管理簿の記載内容(貨物の内容、運送区間、実運送事業者)は、いずれも受注・配車の過程で発生する情報であり、参照元を統一しないと管理簿と実態の不一致が生じるためです。
具体的には、受注番号や案件IDを管理簿の項目に加え、配車表・受注台帳と同じキーで突合できる状態にします。国土交通省も既存の配車表を活用した作成を認めており、配車表に必須項目の列を追加して管理簿を兼ねる構成も選択肢になります。
改正法上、元請事業者は下請への委託時に管理簿の作成対象である旨を伝達し、実運送事業者側から情報の通知を受ける流れになるため、委託連絡と情報回収を受発注フローのどの時点で行うかを決め、案件ごとの確認漏れを防ぐ体制を整えます。
(2)情報更新・保存漏れを防ぐ運用体制
Excel運用では、誰が作成し、誰が確認し、どこに保存するかを事前に決めておく必要があります。管理簿は運送完了日から1年間の保存義務があり、閲覧請求や調査への対応も求められるため、個人のローカル環境に散在する管理では義務を履行できないリスクがあるためです。
Excelファイルの版管理も重要です。同一案件の管理簿が複数バージョン存在すると、どれが正か判別できなくなるため、上書き更新か履歴保存かの方針を統一します。これらの運用を整備することで、閲覧請求や社内確認の際に、該当する管理簿を速やかに提示できる状態を維持できます。
Excelでの管理に限界を感じている場合は、配車・運行日報・請求・各種帳票を一元管理できる運行管理システムの導入も選択肢となります。以下の記事では、物流向けの運行管理システム15選を機能や料金とあわせて比較しています。

(3)下請事業者からの情報通知を回収・督促する仕組み
改正貨物自動車運送事業法では、下請側の各事業者に実運送事業者情報の通知義務が課されていますが、実務上は通知の遅延や記載不備が発生し得るため、元請側で回収状況を管理する仕組みが必要です。
通知が来ない場合でも、元請事業者には実運送事業者と請負階層の把握に取り組むことが求められます。督促の連絡先、督促のタイミング、それでも回収できない場合の記録方法(督促履歴を残す等)をあらかじめ手順化し、通知不備が管理簿の作成漏れに直結しない体制を整える必要があります。
(4)運送完了日を起点とした保存期限の管理方法
Excelで運用する場合は、管理簿または案件一覧シートに運送完了日の列を設け、完了日から1年後の日付を数式で自動表示させる方法が実務的です。期限を過ぎたファイルの扱い(削除するか、期限経過後も一定期間保持するか)も社内で方針を統一します。
閲覧請求や調査は保存期間中に発生し得るため、期限内のファイルを誤って削除しない管理が優先事項になります。固定的な下請構造で管理簿を継続利用している案件は、個々の運送ごとに完了日が発生するため、体制単位の管理簿であっても対象運送の完了時期を別途記録し、保存期間の判定に使える状態にしておく必要があります。
7.まとめ
実運送体制管理簿は、改正貨物自動車運送事業法に基づき、真荷主から運送を引き受けた元請事業者に作成・保存が義務付けられた帳簿です。実運送事業者の商号または名称、貨物の内容、運送区間、請負階層を記載し、運送完了日から1年間、閲覧請求に対応できる状態で保存する必要があります。
自社の案件数や請負構造に照らしてExcel運用の限界が見えた場合は、システムによる管理への移行も含めて管理体制を見直すことが、継続的な法令遵守につながります。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、配車表や受発注情報を一元管理し、実運送体制管理簿の作成・保存に必要な情報を管理しやすい体制の構築を支援します。Excelによる管理の見直しや運行管理業務の効率化をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

