物流改善提案は、運送・倉庫・ピッキングの工程別に切り分けて検討すると、自社に適用できる打ち手を特定しやすくなります。この記事では、国土交通省や経済産業省の公表資料などをもとに、工程別の改善事例13選を紹介したうえで、個別の改善を全体最適化につなげる進め方を解説します。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、鋼材・重量物輸送の現場実績を持ち、自動配車・動態管理・自動日報・勤怠・請求のワンストップカバーにより、配車業務の標準化や運行状況の可視化、日報・請求業務の効率化を支援します。セミオーダー型カスタマイズで自社の物流課題や改善提案に合わせた導入が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
1.物流改善提案の事例13選
(1)運送における改善事例
運送工程の改善は、配車・運行管理の効率化と、荷待ち・附帯作業の削減が中心になります。荷主側の納品条件や商慣行が原因となっている項目も多く、運送事業者単独では解決できない点が特徴です。
①配送ルート最適化と配車計画自動化の導入

3PL企業のスーパーレックスでは、店舗配送の固定ルートを配送店舗の増減にあわせて見直す際、地図上での確認や時間シミュレーションに丸2日を要することが課題でした。AI搭載の自動配車クラウドサービスの導入によって、訪問先件数や配送時間、積載量などの条件を入力すれば数時間で配車計画を作成できるようになりました。
また、従来は土地勘のあるベテランに依存していた配車業務を、車両の基本情報を登録すれば経験の浅いスタッフでも担当できるようになり、業務の標準化と引き継ぎの円滑化にもつながりました。
②配送管理システムの活用

アスクルでは、BtoBとBtoCの混載配送を進める取り組みの一環として、自社開発の配送管理システムを配送パートナーに提供しています。これにより、従来はBtoB配送のみを担っていた配送パートナーでもBtoC配送に対応しやすくなり、BtoBとBtoCの荷物をあわせて扱える機会が増えました。あわせて、置き配を標準の配送方法に設定したことで時間帯指定のない注文が増加し、全体として配送効率の向上につながったとされています。
③段ボール箱の外装表示の標準化

F-LINEプロジェクトでは、味の素など食品メーカー6社が、商品ごとに異なっていた段ボール箱の外装表示を標準化しました。従来は、物流コードや商品名の表示位置、文字フォントなどが統一されておらず、出荷・納品時の商品確認に時間がかかるほか、商品選択ミスの要因にもなっていました。そこで、商品特定情報を右上に集約するなど外装表示のガイドラインを整備し、荷役時の視認性・識別性を高めた結果、商品選択テストでは不正解率の改善と選択時間の短縮が確認されています。
④体系的な教育制度

物流子会社のE社では、物流現場を改善できる人材を継続的に育成するため、共通・階層別・機能別に分けた体系的な教育制度を整備しています。年間スケジュールに沿って、集合研修やeラーニングを通じて新入社員から管理職まで学べる体制を構築し、物流現場改善に関してはQC7つ道具や小集団活動、IEを用いた改善実務などの手法を教育しています。
こうした運送事業者側の取り組みに加えて、荷主企業が発注ロットや納品条件を見直すことも、運送効率化の実現には欠かせません。
2026年4月に全面施行された改正物流効率化法では、荷主に対して、年単位・月単位・週単位の繁閑差の平準化や納品日の集約による発送量・納入量の適正化、配車・運行計画の最適化への協力が努力義務として求められています。繁閑差の平準化が難しい場合には、納入単位や回数の集約に取り組むことも有効とされています。
①のような配車計画自動化の取り組みは、こうした荷主側の発注条件の見直しと組み合わせることで、より高い効果が期待できます。
引用:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/sippers/judgment-criteria/
(2)倉庫における改善事例
倉庫工程の改善は、動線・在庫配置の見直しと、入出荷作業の工程見直しが中心になります。現状分析にもとづく配置変更のように投資を抑えて実施できる事例から、機器導入による省人化まで、投資規模の異なる実例を紹介します。
⑤倉庫レイアウトとロケーション管理の見直し

日用品や文具を扱うNM社の倉庫では、保管スペース不足に加え、対象商品の探索に時間がかかることや、ラック間通路の狭さによる安全面の課題が生じていました。そこで、移動ラックと固定ラックを組み合わせた保管レイアウトへの見直しに加え、中二階の設置、ABC分析に基づくロケーション設定、在庫管理システムの導入を実施しました。その結果、収容パレット数は600パレットから911パレット、空間利用率は18.8%から33%へ向上し、入出庫総作業時間も188秒から152秒へ短縮されています。
⑥検品台車の導入とレイアウト見直し

日本ロジテム成田出張所では、電子部品物流の現場で、梱包時の混入やハンディ端末の応答遅延、送り状処理の煩雑さなどが課題となっていました。そこで、入荷検品・出荷エリアとピッキングエリアを再編するレイアウト見直しに加え、仕向け先ごとに商品を分けるピッキングトレーや、パソコン・スキャナー・プリンターを搭載した手作り検品台車を導入しました。
これにより、検品と伝票出力をその場で行えるようになり、歩行距離や待ち時間を削減した結果、作業者数は18人から12人に減少し、全体で30%以上の効率向上を実現したとされています。
⑦物流ロボットとAIで倉庫作業の自動化・省力化

セイノー情報サービスでは、BRAISの考え方に基づき、物流ロボットやAIを活用した倉庫作業の自動化・省力化に取り組んでいます。事例では、Rapyuta AMRによるピッキング支援や、HAI ROBOTICSのGTPロボット導入により、ピック作業を人からロボットへ移行し、保管効率やピッキング効率の向上を図っています。
また、WMSのデータを用いて出荷予測、在庫配置、作業動線をAIで最適化し、作業者が最短ルートで移動できるようにすることで、歩行時間を25%短縮したとされています。
⑧自動フォークリフトとエレベーター連携

日本ロジテムでは、倉庫内搬送の省人化と処理能力向上を目的に、自動フォークリフトとエレベーター連携システムを導入しました。これにより、フロア間をまたぐ搬送を含めて倉庫内搬送を自動化し、従来は3名で行っていた搬送作業を1名体制に削減するとともに、搬送量も20%向上したとされています。
⑨棚搬送ロボットの導入で歩行と探索を削減

SBS東芝ロジスティクスでは、倉庫内のピッキング作業における歩行距離や商品探索の負担を減らすため、棚搬送ロボットを導入しました。作業者のもとへ棚を自動搬送する仕組みにより歩行を減らし、あわせてプロジェクション表示で対象商品の位置を示すことで、棚内で探す作業も削減しています。
その結果、ピッキング生産性は1時間あたり34行から71行へ向上したとされています。
こうした倉庫の省人化・自動化の取り組みは、荷主企業が委託先の物流事業者・倉庫会社を選定・評価する際の判断材料にもなります。
国土交通省が実施した「物流施設におけるDX推進実証事業」(令和7年度)では、採択された21社の取り組みのうち、ピッキングから仕分け・出庫検品にかけての省人化・自動化を目指す事例が主流であったことが報告されています。
荷主企業が委託先に改善を求める際は、こうした国の実証事業の動向も参考に、具体的な工程を指定して協議することが有効です。
引用:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001995026.pdf
(3)ピッキングにおける改善事例
⑩ロケーション変更

文具卸売業のA社では、物流コスト削減に向けて、物流センターを運営する物流会社B社と共同でピッキング作業の改善に取り組みました。現場調査の結果、移動の多さや在庫探し、作業方法の分かりにくさが生産性低下の要因となっていたため、ロケーション体系の見直し、オリコン置場や通路の確保、補充ルールの設定、表示や運用の標準化などを段階的に実施しました。
さらに、ロケーション変更の効果を歩数や生産性で検証しながら改善を進めた結果、ピッキング生産性は31.0行/人時から35.5行/人時へ向上し、年間で1,644万円の改善効果が見込まれるとしています。
ロケーション変更によるピッキング生産性の向上は、運送事業者や倉庫会社だけでなく、荷主企業にとっても欠品率の低下や出荷リードタイムの短縮といった形でメリットが及びます。委託先の生産性改善が自社の納期遵守率にも直結するため、荷主企業側からも積極的に改善提案に関与する価値があります。
⑪多品種物流におけるピッキング・仕分けの自動化

アパレル用品を扱う丸二倉庫では、品種の多さゆえに返品・出荷対応が人手に頼った属人的な運用となっていました。同種商品を宛先別に出荷する際には同一動線を何度も往復する必要があるほか、種別ごとに梱包するため全ピック完了を待つ工程も発生し、作業の非効率につながっていました。
そこで、トータルピッキングシステムと3Dソーター(自動仕分機)を導入し、複数出荷分の指示を一度にソーターへ送ることで、出荷先別の仕分けを自動化しました。その結果、総投入人員472人のうち134.2人分(約28.4%)の工数を削減したほか、指示待ち時間の削減や処理精度の向上、歩行を伴わない定点作業への転換による身体的負担の軽減にもつながったとされています。
⑫デジタルツインで作業動線を最適化

日本物流開発では、倉庫内のピッキング作業における歩行距離の長さや作業負荷を改善するため、デジタルツインを活用してマルチピック時の最短距離を設定し、ピッキング・検品・仕分けを一括で処理できる仕組みを導入しました。これにより、倉庫内の総歩行距離を53.7%削減し、作業生産性も21.8%向上したとされています。
⑬冷凍倉庫にAGVを導入

関西フローズンでは、冷凍倉庫内の省人化と作業効率向上を目的に、-25℃環境に対応したAGVを導入し、搬送・格納・ピッキング・バース搬送を統合的に制御する仕組みを構築しました。これにより、倉庫内で発生していた人手による搬送作業を自動化し、出荷作業の生産性は103.0%、入荷作業の生産性は127.8%向上したとされています。
配車計画の自動化や動態管理、運行データの一元管理など、物流改善を支える運行管理システムを比較したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。主要な運行管理システム15製品の機能や特徴、比較ポイントを紹介しています。

2.物流改善提案で全体最適化を図る方法

(1)現場課題を把握する
物流改善を進める出発点は、現場で何が起きているかを数値で把握することです。感覚的な不満や個別の苦情だけで改善テーマを決めると、優先順位を誤るおそれがあるため、まずは工程ごとの実態を可視化する必要があります。
運行記録計や倉庫管理システムの実績データに加え、ドライバーや庫内作業者への聞き取りを組み合わせることで、数値だけでは把握しにくいボトルネックも整理できます。荷待ち時間については、実態を把握したうえで、その時間を運送に充てられた場合の効果まで見える化することが、改善テーマの選定につながります。
3PLへ委託している場合は、荷主側に現場データが蓄積されていないことも多いため、委託先からKPIデータを共有してもらう枠組みを整える必要があります。こうしたデータ共有の仕組み自体が、その後の改善実行体制の基盤になります。
(2)改善テーマを工程別に切り分ける
把握した課題は、発注、納品条件、保管、出荷指示、輸配送などの工程ごとに切り分けて整理します。工程別に整理することで、どの業務で問題が起きているのか、誰が改善に関与すべきかを明確にできます。
あわせて、各工程の課題を「荷主が直接見直せる項目」と「委託先への働きかけが必要な項目」に分けて整理することも重要です。
| 区分 | 該当する項目の例 | 荷主の関与の仕方 |
|---|---|---|
| 荷主が直接見直せる項目 | 発注方法、発注ロット、納品頻度、納品時間指定 | 荷主が自社判断で見直しを進める |
| 委託先への働きかけが必要な項目 | 保管方法、出荷指示の方式、庫内レイアウト | 荷主が改善要望を示し、データに基づいて委託先と協議する |
この切り分けを行わないまま改善提案をまとめると、自社で決められない施策が混在し、実行段階で停滞しやすくなります。工程別の課題一覧に責任主体をあわせて整理し、自社で決定できる施策と、委託先と協議しながら進める施策を分けておくことが、実行可能な改善提案につながります。
(3)改善案ごとの効果と実行負荷を比較
洗い出した改善案は、期待効果と実行負荷の両面から比較し、優先順位を付けます。効果の大きさだけで選定すると、システム投資や取引先との条件交渉を伴う難度の高い施策ばかりが並び、着手が遅れる原因になります。
比較の観点は次のように整理できます。
| 比較観点 | 確認内容 | 例 |
|---|---|---|
| 期待効果 | 削減できる時間・コスト、品質向上の度合い | 荷待ち時間の削減分、誤出荷率の低下 |
| 実行負荷 | 投資額、社内工数、システム変更の有無 | 端末導入費、レイアウト変更の作業工数 |
| 関係者調整 | 社内他部署・取引先・委託先との合意の要否 | 納品条件変更には着荷主の合意が必要 |
| 実現までの期間 | 着手から効果発現までのリードタイム | 帳票改善は短期、拠点再編は長期 |
効果が中程度でも負荷が小さく短期間で実現できる施策は、早期の成功実績として関係者の協力を得る材料になるため、優先的に着手する価値があります。
(4)段階的な実行案に落とし込む
物流現場は日々の出荷を止められないため、大規模な変更を一度に行うと、トラブル発生時の切り戻しが困難になります。
各段階には、効果を判定するKPIと判定時期を設定します。
試行段階で想定効果が得られない場合に、条件を変えて再試行するか、施策自体を見直すかの判断基準をあらかじめ決めておくことで、計画の停滞を防げます。
(5)関係部署・委託先と共有し実行体制を整える
発注条件や納品条件の見直しを伴うため、関係部署と委託先を含めた実行体制を整える必要があります。
| 対象 | 主な関係者 | 役割 |
|---|---|---|
| 社内 | 購買、営業、生産、物流企画、SCM | 発注条件、納品条件、在庫運用、委託先対応などの調整を行う |
| 社外 | 調達先、委託先物流事業者 | 改善施策の実行、運用変更、KPI共有、進捗確認に参加する |
社内では、購買、営業、生産に加え、委託先との窓口となる物流企画部門やSCM部門が主な調整先になります。特に納品条件の変更は顧客対応にも関わるため、営業部門を早い段階で巻き込むことが必要です。
社外では、調達先や委託先物流事業者が主要な関係者になります。改善施策を継続的に進めるには、委託先に対して改善による効果を共有し、KPIを確認する会議体を設けるなど、進捗を定期的に確認できる運用を整えることが必要です。
3.まとめ
物流改善提案は、公表されている実在の事例を工程別に参照することで、自社に適用可能な打ち手を具体化できます。
個別の施策を全体最適化につなげるには、実態データにもとづく課題把握、荷主が直接動かせる項目と委託先への働きかけが必要な項目の切り分け、効果と負荷の比較による優先順位付け、段階的な実行、関係部署・委託先を含めた実行体制の構築という手順を踏むことが重要です。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、自動配車・動態管理・自動日報・勤怠・請求を一元化し、配車業務の標準化や運行状況の可視化を支援します。物流改善提案の具体化や運行管理業務の効率化をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。


