現代の運送業界におけるコンプライアンスは、経営基盤を支える最優先事項へと変貌を遂げており、物流効率化法の施行以降、事業者にはより高度な法的対応と社会的責任が課せられています。
本記事では、運送業における法令遵守の全体像から、貨物利用運送事業法・物流効率化法の実務対応、違反事例まで体系的に解説します。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、主観や記憶に頼らない客観的なデータ管理により、労務違反のリスクを未然に防ぎ、監査にも動じない健全な運行管理体制の構築を支援します。システムを活用した抜本的なコンプライアンス遵守をご検討の場合には、ぜひご連絡ください。
1.運送業における法令遵守の全体像

かつての法令遵守は、事故防止や労働時間管理といった実運送現場における対応が中心でした。近年は、トラック運転者の労働時間規制の適用を契機として、荷主や元請事業者を含めたサプライチェーン全体での対応が求められる枠組みへと変化しています。
ここでは、運送業における法令遵守の全体像を整理します。
(1)物流2024年問題を経て進化した規制的措置とは
トラック運転者の時間外労働については、2024年4月から年間960時間の上限規制が適用されており、長時間労働の是正に向けた対応が求められています。これに伴い、発着荷主や元請事業者を含めた関係者全体で、適正な運行計画や拘束時間の管理を前提とした輸送体制の構築が必要とされています。
| 区分 | 2024年4月1日以降 |
|---|---|
| 1年の拘束時間 | 原則:3,300時間以内例外(※1):3,400時間以内 |
| 1か月の拘束時間 | 原則:284時間以内例外(※1):310時間以内(年6ヵ月まで) |
| 1日の休息期間 | 原則:継続11時間を基本とし、9時間を下回らない例外:宿泊を伴う長距離輸送の場合(※2)、継続8時間以上(週2回まで)※休息期間のいずれかが9時間を下回る場合は、運行終了後に継続12時間以上の休息を付与 |
① 284時間超は連続3か月まで
② 1か月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努める
※21週間における運行がすべて長距離貨物運送(一の運行の走行距離が450㎞以上)であり、かつ休息期間が住所地以外の場所である場合
引用:https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/shipping
また、荷待ち時間の削減や積卸作業の効率化、適正運賃の収受といった観点からも、関係事業者間での役割分担や取引条件の見直しが求められています。これらは、トラック運転者の労働時間管理と密接に関連する事項として位置づけられています。
(2)物流効率化法による大規模事業者への義務化について

改正された物流効率化法は、一定規模以上の荷主・物流事業者を「特定事業者」と位置づけ、物流効率化に関する取組を計画的かつ継続的に実施するための義務が整理されています。これにより、従来の努力義務にとどまらず、計画策定・実施・報告までを含む実務対応が求められる枠組みとなっています。
主な義務内容は以下のとおりです。
| 物流効率化計画の策定・届出 | 特定事業者は、中長期的な物流効率化に関する計画を策定し、主務大臣へ届け出ることが求められる |
|---|---|
| 物流統括管理者(CLO)の選任 | 物流効率化を統括する責任者を選任し、社内での推進体制を明確化することが求められる |
| 定期的な実施状況の報告 | 計画に基づく取組の進捗について、定期的に主務大臣へ報告することが求められる |
| 勧告・命令・公表制度への対応 | 義務の履行状況に応じて、主務大臣による勧告・命令・公表の対象となる場合がある |
これらの制度により、物流効率化は個別企業の取組にとどまらず、サプライチェーン全体での対応が前提となる枠組みとして整理されています。
参考:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/5minutes/
(3)下請法・独占禁止法による物流取引適正化の厳格化
物流分野における取引適正化は、下請法(2026年1月以降は中小受託取引適正化法)と独占禁止法を組み合わせた枠組みにより強化されています。物流事業者間の再委託取引には下請法が適用され、荷主と物流事業者の関係には独占禁止法上の規制が適用されることで、サプライチェーン全体での公正な取引環境の確保が求められています。
2026年1月施行の改正では、規制対象および禁止行為が拡充され、物流取引への適用が明確化されています。特に、特定運送委託が対象取引として位置づけられ、発荷主から運送事業者への委託も規制の枠組みに含まれることとなりました。主な禁止行為は以下のとおりです。
| 一方的な代金決定 | 協議に応じず、取引条件を一方的に決定する行為 |
|---|---|
| 不適切な支払手段 | 手形払など、実質的に現金化が困難な支払手段の利用 |
| 代金の減額・支払遅延 | 正当な理由なく代金を減額、または支払を遅延する行為 |
| 不当な負担の要請 | 経済的利益の提供要請や買いたたきなど、一方的に負担を課す行為 |
現場では「燃料費・人件費の上昇分を運賃に反映できない」という声が依然として多く、これが下請法・独禁法上の「買いたたき」に該当するケースとして問題視されています。2025年度以降、国土交通省と公正取引委員会による合同パトロール(立入調査)が強化されており、荷主・元請側の担当者レベルでも法的リスクを理解しておくことが実務上重要です。
また、行政による執行体制も強化されており、関係省庁と公正取引委員会が連携し、指導・助言や情報共有を通じた監督が行われる枠組みが整備されています。
参考:https://www.kanto.meti.go.jp/press/20260311_buturyu_yousei_press.html
参考:https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/sep/250926_toriteki_mlitpatrol_leaflet.pdf
(4)貨物利用運送事業法による運送責任の明確化
貨物利用運送事業法および関連制度の整備により、運送契約および委託構造の透明化を通じて、運送責任の所在を明確にする仕組みが強化されています。特に、元請事業者・利用運送事業者・実運送事業者が関与する多層的な委託関係において、役割と責任の明示が求められています。
主な制度対応は以下のとおりです。
| 契約内容の書面化 | 運送契約時に、役務内容・運賃・附帯業務の対価等を記載した書面の交付が求められる |
|---|---|
| 実運送体制の管理 | 元請事業者は、実運送事業者の名称等を記載した管理簿を作成し、実運送体制を把握する必要がある |
| 再委託の適正管理 | 多重下請構造においても、無許可事業者への委託防止や委託関係の適正化が求められる |
これらの措置により、利用運送事業者は運送サービス全体の提供主体として位置づけられ、契約内容の明確化と実運送体制の管理を担う責任主体として整理されています。荷主・元請・実運送事業者の関係は、書面および管理体制を通じて可視化され、運送責任の所在が制度上明確化されています。

2.貨物利用運送事業法の定義と適用範囲

貨物利用運送事業法は、他の運送事業者の輸送手段を利用して貨物を運送する事業を対象とし、その定義や適用範囲を整理するための法制度です。ここでは、利用運送事業の基本的な考え方と対象となる事業範囲を整理します。
(1)貨物利用運送事業の定義と運送責任の所在
貨物利用運送事業とは、荷主の需要に応じて有償で、他の運送事業者(実運送事業者)が行う輸送を利用して貨物を運送する事業を指します。自ら輸送手段を保有せず、トラック・船舶・航空・鉄道などの運送機関を組み合わせて輸送サービスを提供する点が特徴です。
この事業の本質は、単なる仲介ではなく、利用運送事業者自身が荷主と運送契約を締結し、運賃を収受したうえで運送責任を負う点にあります。実際の輸送は実運送事業者が担うものの、荷主に対する履行責任は利用運送事業者に帰属する構造となっています。主な責任構造は以下のとおりです。
| 契約主体 | 利用運送事業者(荷主と運送契約を締結) |
|---|---|
| 輸送の実施主体 | 実運送事業者(実際に貨物を輸送) |
| 運賃の収受 | 利用運送事業者が荷主から収受 |
| 荷主に対する責任主体 | 利用運送事業者 |
また、貨物利用運送事業には、単一の輸送手段を利用する第一種と、集荷から幹線輸送、配達までを一貫して提供する第二種の区分があり、いずれも荷主に対して一体的な運送サービスを提供する主体として位置づけられています。
このように、貨物利用運送事業は、実運送事業者とは異なる立場でありながら、荷主に対して運送契約上の責任を負う主体として制度上整理されており、運送責任の所在は「実運送」と「契約主体」が分離された構造の中で明確化されています。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000019.html
参考:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/kaiseijigyoho/text2025.pdf
(2)第一種と第二種貨物利用運送事業の適用範囲
貨物利用運送事業は、その提供形態に応じて「第一種」と「第二種」に区分されており、利用する輸送手段およびサービス範囲により適用範囲が整理されています。
参考:https://www.mlit.go.jp/common/000218072.pdf
① 第一種貨物利用運送事業(登録制)
第一種貨物利用運送事業は、トラック・船舶・航空・鉄道のいずれか一つの輸送手段を利用して貨物の運送を行う事業です。第二種貨物利用運送事業に該当しないものがこの区分に含まれます。
単一の輸送モードを前提とした利用運送であり、特定の輸送区間において運送サービスを提供する形態が対象となります。事業開始にあたっては、国土交通大臣または地方運輸局長への登録が必要とされています。
なお、自社トラックが主力であっても、繁忙期の恒常的な外注や、エリアごとの委託が年間を通じて反復継続する場合は、貨物利用運送事業に該当する可能性が高くなります。一般貨物自動車運送事業の許可だけでは足らず、第一種または第二種の登録・許可が別途必要となるため注意が必要です。
② 第二種貨物利用運送事業(許可制)
第二種貨物利用運送事業は、船舶・航空・鉄道による幹線輸送に加え、その前後のトラックによる集荷および配達を一貫して行う事業です。いわゆるドア・ツー・ドアの複合一貫輸送を提供する形態が該当します。
この区分では、複数の輸送手段を組み合わせた輸送全体を一体として提供するため、より高度な事業管理が求められます。そのため、事業開始には登録ではなく、主務大臣による許可が必要とされています。
なお、幹線輸送のみを他の運送事業者に委託している場合でも、その前後の集荷・配達を含めて一体的に輸送サービスを提供している場合は、第二種貨物利用運送事業に該当する可能性があります。第一種との区分を誤り、登録のみで事業を行っていると、必要な許可を取得していない状態となるため、輸送全体の提供形態に基づいて適用区分を判断する必要があります。
(3)実運送事業者が利用運送を兼ねる際の注意点
実運送事業者が他の運送事業者を利用して貨物を運送する場合、その行為がどの法制度に該当するかを整理する必要があります。運送の委託形態によっては貨物利用運送事業に該当するケースと、適用除外となるケースが区分されています。
| 他のトラック事業者へ委託する場合 | 貨物利用運送事業法の適用除外(登録不要)※ただし貨物自動車運送事業法に基づく事業計画変更の手続が必要 |
|---|---|
| 利用運送事業に該当する場合 | 荷主と契約し、他の事業者に輸送を委託する形態は利用運送事業に該当 |
また、実運送と利用運送を併用する場合には、契約主体と実運送主体の区分が不明確になりやすく、適用法令の判断を誤るリスクがあります。特に、荷主との契約関係や委託の形態によって適用区分が変わるため、輸送スキーム全体に基づいて事業区分を整理することが求められます。
参考:https://www.mlit.go.jp/common/001207910.pdf
3.利用運送事業と実運送事業の違い

利用運送事業と実運送事業は、いずれも貨物輸送に関与するものの、契約主体と責任の所在において明確な違いがあります。ここでは、両者の役割と構造上の違いを整理します。
(1)運送責任の所在の違い
貨物利用運送事業では「契約主体」が責任を負い、実運送事業では「輸送実施主体」が契約に基づき責任を負うという構造が構築されています。
| 利用運送事業 | 実運送事業 | |
|---|---|---|
| 契約関係 | 荷主と直接契約 | 利用運送事業者と契約 |
| 運送責任の所在 | 荷主に対して責任を負う | 利用運送事業者に対して責任を負う |
| 役割 | 輸送全体の手配・提供主体 | 実際の輸送の実施主体 |
貨物利用運送事業は、荷主の需要に応じて有償で運送を引き受け、実運送事業者を利用して輸送を行う事業であり、荷主に対して運送責任を負う主体として位置づけられています。
一方、実運送事業者は実際に貨物の輸送を行う主体であり、利用運送事業者との間で運送契約を締結し、その契約に基づいて輸送を実施します。このため、実運送事業者は利用運送事業者に対して運送責任を負う構造となります。
(2)収益構造の違い
貨物利用運送事業は「運送の手配」によって収益を確保する構造であり、実運送事業は「輸送の実施」によって収益を確保する構造として整理されます。
| 利用運送事業 | 実運送事業 | |
|---|---|---|
| 運賃の収受先 | 荷主から収受 | 荷主または元請から収受 |
| コスト構造 | 外注費(実運送委託費)が中心 | 車両費・人件費・燃料費など自社運行コストが中心 |
| 収益の構成 | 運賃と外注費の差額 | 運賃から運行コストを控除した利益 |
| 事業の特徴 | 輸送手配・調整を中心とした構造 | 輸送の実施を前提とした構造 |
貨物利用運送事業と実運送事業では、収益の構造が異なります。貨物利用運送事業は、荷主から運賃を収受し、実運送事業者へ運送を委託することで成り立つ構造となっており、運賃と外注費との差額が収益として整理されます。
一方、実運送事業は、自ら輸送を実施し、運送の対価として運賃を収受する構造であり、車両費・人件費・燃料費などの運行コストを前提に収益が構成されます。

(3)法規制の違い
実運送事業は輸送手段ごとに個別の法律が適用されるのに対し、利用運送事業は複数の輸送手段を横断して一つの法律で規制される構造となります。主な違いは以下のとおりです。
| 区分 | 利用運送事業 | 実運送事業 |
|---|---|---|
| 適用法令 | 貨物利用運送事業法 | 輸送モードごとの個別法(例:貨物自動車運送事業法、鉄道事業法、航空法、海上運送法など) |
| 規制の対象 | 輸送手段を利用した運送サービス全体 | 各輸送手段ごとの運送行為 |
| 規制の特徴 | 複数モードを横断した一体的な規制 | モードごとに個別に規制 |
| 許認可制度 | 第一種(登録)・第二種(許可)に区分 | 各事業法に基づく許可制 |
これにより、利用運送事業者は複数の輸送モードを組み合わせたサービス全体について、統一的な規制の下で事業を行うことになります。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000014.html
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001859865.pdf
(4)多重下請構造における実務上の留意点
利用運送事業と実運送事業が混在する多重下請構造では、契約書類の整備不備・責任の所在の曖昧さが行政処分リスクに直結します。実務上、特に注意が必要な点は以下のとおりです。
| 留意点 | 内容 |
|---|---|
| ①「どこが荷主と契約しているか」を常に明確にする | 利用運送事業者が複数介在する場合、それぞれの契約主体と荷主との関係が不明確になりやすく、事故・遅延発生時に責任の所在が争われるケースがあります。 |
| ②無許可事業者への再委託リスク | 実運送を担う事業者が必要な許可・登録を有しているかを発注前に確認することが、元請利用運送事業者の義務として整理されています。 |
| ③書面化の徹底 | 口頭や慣行による委託関係は、法令違反の温床になりやすく、貨物利用運送事業法上の書面交付義務(運賃・役務内容等の記載)が履行できていない事例が行政処分でも多数確認されています。 |
これらの点を事前に整理しておくことで、多重下請構造における法令違反リスクを未然に防ぐことができます。輸送スキーム全体を定期的に見直し、契約関係と許認可の状況を常に把握しておくことが、実務上の基本姿勢として求められます。
多重下請構造の整理は、利用運送と実運送の役割の違いを理解するうえで不可欠であり、3章全体の論点を補完する位置づけとなります。
参考:https://www.mlit.go.jp/common/001179705.pdf
4.貨物利用運送事業法および施行規則に基づく遵守事項

貨物利用運送事業法および施行規則では、事業の適正な運営を確保するために、許認可手続から日常業務に至るまで具体的な遵守事項が定められています。ここでは、実務において求められる主な義務と対応内容を整理します。
(1)利用運送事業者が備え置くべき法定書類と保存義務
貨物利用運送事業者は、事業運営に関する記録や帳簿等について、営業所等に備え置き、一定期間保存することが求められます。これらの書類は、事業の適正な運営状況や運送の取引内容を確認するための基礎資料として位置づけられています。
具体的には、運送の引受内容や取引条件に関する書類、業務の実施状況を記録した帳簿、契約関係書類などが該当します。これらは、監督行政庁による報告徴収や立入検査に対応するため、営業所において常時確認できる状態で管理する必要があります。
保存期間については書類の種類ごとに異なり、一定期間の保存義務が課されます。例えば、運送に関する記録については一定期間の保存が求められる運用があり、運送事業関連の帳票では1年や3年など書類ごとに保存期間が区分されています。
参考:https://laws.e-gov.go.jp/law/401AC0000000082
参考:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/kaiseijigyoho/text2025.pdf
(2)運賃・料金の掲示と燃料サーチャージの明記
運送事業者は、運賃・料金およびその適用方法について、あらかじめ運賃料金表として定め、営業所への掲示またはウェブサイトへの掲載により公示することが求められています。特に個人を対象とした取引においては、店頭掲示またはインターネット上での公開が明確に位置づけられています。
また、燃料費の変動に対応するため、運賃・料金とは別に燃料サーチャージを設定する場合には、その算定方法や適用条件を明確に定める必要があります。燃料サーチャージは、燃料価格の市場変動に応じて収受する仕組みとして位置づけられており、運賃とは区分して取り扱われます。
標準的な運賃を適用する場合には、告示において燃料サーチャージの考え方が示されており、当該内容に基づく運用が前提とされています。一方で、独自に設定する場合には、基準となる燃料価格や変動幅に応じた算定方法を自社で設定し、運賃体系の一部として明示する必要があります。

参考:https://jta.or.jp/member/kaisei_jigyoho/top/hyoujun_unchin.html
参考:https://jta.or.jp/lp/surcharge2022/
(3)事業計画の変更届出と定期報告義務
貨物利用運送事業者は、事業計画に変更が生じた場合、その内容に応じて「認可」または「届出」の手続きを行う義務があります。特に第二種貨物利用運送事業については、事業計画や集配事業計画の重要な変更を行う際には、あらかじめ国土交通大臣の認可を受けなければなりません。
一方で、軽微な変更や事後的な変更事項については、所定の期間内に届出を行う必要があります。例えば、利用する運送事業者の変更などは、変更後遅滞なく届出を行うことが求められています。
また、事業運営の適正性を確保するため、行政庁から求められた場合には報告を行う義務があり、これに対応できるよう記録や帳簿の整備が前提とされています。定期的な報告の具体的内容については、明示的な情報が確認できないものの、法令に基づく報告徴収への対応義務が前提となります。
参考:https://laws.e-gov.go.jp/law/401AC0000000083
5.物流効率化法に基づく特定事業者の責務

物流効率化法では、一定規模以上の事業者を「特定事業者」として指定し、物流効率化に向けた中長期計画の作成・提出および定期報告の実施が義務付けられています。また、これらの取組状況については、国による指導・助言や調査・公表、必要に応じた勧告・命令の対象となります。ここでは、物流効率化法に基づく特定事業者の責務について解説します。
(1)CLOの選任と社内権限の確立
物流効率化法に基づき、特定荷主および特定連鎖化事業者には、物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられています。CLOは、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者から選任する必要があり、経営判断に関与できる役員等の経営幹部が前提とされています。
CLOは、中長期計画の作成や、トラックドライバーの負荷低減、輸送の効率化に関する事業運営方針の策定、管理体制の整備などを統括する役割を担います。これらの業務は、物流部門に限定されるものではなく、調達・生産・販売など社内各部門にまたがる対応が前提とされています。
そのため、CLOを形式的に選任するだけではなく、全社横断で方針を実行できる権限と体制を確立することが制度上の前提となります。経営レベルでの意思決定権限と組織連携を伴う体制整備により、物流効率化に関する施策を実行する仕組みが求められています。
なお、国土交通省の公表資料によれば、CLOに求められる主な業務として「物流効率化に関する方針の策定」「社内各部門への周知・推進」「取引先への働きかけ」が明示されており、形式的な選任にとどまらず、実際に機能する体制の構築が審査・報告の評価ポイントとして位置づけられています。
参考:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/clo/
(2)中長期計画の作成・提出
物流効率化法に基づき、特定事業者は、物流効率化に関する措置の実施内容を整理した中長期計画を作成し、主務大臣へ提出する義務があります。計画は、判断基準で示された取組事項を踏まえ、輸送効率の向上や荷待ち・荷役時間の短縮などに関する具体的な施策を体系的に整理するものです。
計画には、実施する措置の内容、具体的な目標、実施時期等を記載することが求められており、物流効率化に向けた中長期的な対応方針を明確化する位置づけとなります。
提出については、毎年度提出を基本としつつ、計画内容に変更がない場合には5年に一度の提出とされており、所管大臣に対して継続的に管理される仕組みとなっています。
参考:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/planning/
(3)定期報告の実施
物流効率化法に基づき、特定事業者は、指定を受けた翌年度以降、毎年度、物流効率化に関する取組状況について主務大臣へ報告する義務があります。報告内容には、判断基準の遵守状況、関連事業者との連携状況、具体的な取組内容などが含まれます。
また、報告項目の一つとして、荷待ち時間や荷役等時間の状況についての把握・報告が求められており、自社施設等における実測データをもとに記載することが前提とされています。計測方法については、デジタル技術の活用やサンプリングなど一定の柔軟性が認められています。
これらの定期報告は、中長期計画と連動して取組状況を継続的に把握・管理する仕組みとして位置づけられており、提出された内容は行政による指導や評価の対象となります。
参考:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/regular-report/
6.利用運送事業者の改善基準告示遵守について

改善基準告示は、トラックドライバーの拘束時間や休息期間等の基準を定めたものであり、主として実運送事業者に対して適用される基準です。一方で、利用運送事業者についても、運送手配や取引条件の設定を通じて、実運送事業者が当該基準を遵守できる環境を確保することが求められています。
ここでは、利用運送事業者の改善基準告示遵守について解説します。
(1)発注・運行条件の設定における配慮事項
改善基準告示は、トラックドライバーの拘束時間や休息期間等を定めた基準であり、直接の適用対象は実運送事業者です。一方で、利用運送事業者についても、運送の委託や発注を行う立場として、実運送事業者が当該基準を遵守できるよう配慮することが求められています。
| 発注内容・運行条件の管理 | ドライバーの拘束時間や休息時間に影響を与える条件を適切に管理する |
|---|---|
| 着時刻設定の適正化 | 無理な着時刻設定や過度な運行負担を伴う発注を行わない |
| 関係者間の調整 | 必要に応じて荷主や実運送事業者との間で調整を行う |
また、納品時間の集中回避や荷役作業の効率化など、発注側の運用改善により拘束時間の削減につながる取組が整理されています。これらは、運送手配の段階で反映される事項であり、利用運送事業者も発注条件を通じて運行環境に影響を与える立場として対応することが求められます。
参考:https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/shipper
参考:https://jsite.mhlw.go.jp/ibaraki-roudoukyoku/content/contents/koga_roudoujikan_s02_r0408.pdf
(2)荷待ち・荷役時間の削減に向けた役割
荷待ち・荷役時間の削減は、荷主側の発注方法や受渡し条件が、待機時間や作業時間の発生要因となるため、関係者全体での運用改善が前提とされています。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 荷待ち・荷役時間の目標設定 | 荷待ち時間と荷役時間の合計を1運行あたり2時間以内とする※既に達成している場合は1時間以内を目指す |
| 実態把握の徹底 | 到着時刻、作業開始・終了時刻を記録し、荷待ち時間を可視化する |
| 発注条件の見直し | 適切な日時指定や作業の平準化により待機時間の発生を抑制する |
国土交通省の2024年度調査によれば、トラックドライバーの1運行あたりの荷待ち・荷役時間の合計は平均3時間2分に上り、拘束時間全体(平均11時間46分)の約4分の1を占めています。この数値は前回調査からほぼ横ばいであり、政府目標の達成には至っていない現状が示されています。荷待ち・荷役時間の削減は、発注条件や運用の見直しなど荷主側の対応なしには改善が難しい課題として位置づけられています。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001854525.pdf
また、荷待ち時間や荷役時間の実態を記録・把握することにより、具体的な改善につなげることが前提とされています。これらの取組は、発注条件や運用の見直しとあわせて実施されるものであり、関係者間での調整を通じて、拘束時間削減に資する運送環境の整備が求められています。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000022.html
参考:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/
7.違反事例から見る主要な行政処分

運送業界における行政処分は、大手荷主からの契約解除や、新規入札からの排除に直結することを強く認識しておく必要があります。ここでは、事例をもとに主要な行政処分をご紹介します。
(1)貨物利用運送事業法における主な違反事例
① 無許可・名義貸し
無許可・名義貸しとは、貨物自動車運送事業において、事業の許可を受けていない者が運送事業を行う行為や、許可を受けた事業者が自己の名義を他人に利用させる行為を指します。特に名義貸しについては、貨物自動車運送事業法第27条第1項により禁止されており、事業者は自らの名義を他人に一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業のために利用させてはならないとされています。
実際の判例では、許可事業者が他社に車両をリースした行為が名義貸しに該当するかが争われています。当該事案においては、許可事業者が自社の営業表示の使用を許諾しておらず、相手方が自己の営業表示で運送を行っていたことから、名義貸しには該当しないとの主張がなされています。
一方で、当該相手方は当該車両を用いて無許可で一般貨物自動車運送事業を行っており、許可を受けずに有償で運送事業を実施した点が違反行為に該当するとされています。
参考:https://hanrei.japanlaw.net/a/602/081602
② 約款および書類管理の違反
約款および書類管理に関する違反としては、まず運送約款の認可を受けていない状態で事業を行う行為や、運賃・料金および運送約款等を適切に掲示していない行為が該当します。これらは貨物自動車運送事業法に基づく義務違反として行政処分の対象とされています。
また、運行管理に関する各種記録の作成・保存義務に関する違反も含まれます。具体的には、点呼記録、乗務等の記録、運行記録計の記録、事故記録、運行指示書、運転者台帳などについて、未作成、不備、改ざん、保存義務違反が確認された場合、処分対象となります。
実際の行政処分事例としては、運賃・料金および運送約款の掲示を行っていなかった事例や、点呼記録・乗務等記録・運行指示書・運転者台帳について未作成または保存義務違反が認められた事例が確認されています。これらはいずれも書類管理体制の不備として処分対象とされています。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/data/transmittal_k104.pdf
参考:https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000370107.pdf
③ 報告義務の懈怠・検査拒否
報告義務の懈怠とは、行政機関から求められた報告に対して適切に対応しない行為を指し、未報告や虚偽の報告が該当します。報告を行わない場合は警告や車両停止処分の対象となり、虚偽の報告を行った場合にはより重い処分が科されることが示されています。
また、検査拒否に関しては、立入検査等に対してこれを拒む行為や、検査時に虚偽の陳述を行う行為が違反とされています。これらは貨物自動車運送事業法第60条第4項に基づく違反行為として位置付けられており、行政処分の対象となります。
さらに、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関からの資料提出要請に対してこれを拒んだ場合も、同様に違反行為として扱われることが示されています。
実際の違反事例としては、行政からの報告命令に対して必要な報告を行わなかった事例や、虚偽の内容を報告した事例が確認されています。また、立入検査に際して検査を拒否または忌避した事例も掲載されており、これらはいずれも報告義務違反および検査拒否として行政処分の対象とされています。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/data/transmittal_k104.pdf
参考:https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000363731.pdf
(2)荷主勧告制度の適用について
荷主勧告制度は、実運送事業者の違反行為が主として荷主の行為に起因する場合に発動される制度であり、具体的には荷主の関与が認められる事例に基づいて適用されます。
| 到着時間設定 | 非合理的な到着時間を指定し、改善基準告示違反を誘発するケース |
|---|---|
| ペナルティ設定 | 遅延に対して過度な違約金・ペナルティを課すケース |
| 貨物量の変更 | 積込み直前に貨物量を増加させ、過積載や拘束時間超過を招くケース |
| 荷待ち時間 | 荷捌き場において恒常的な手待ち時間が発生しているにもかかわらず改善されないケース |
| 荷主関与 | 違反行為について荷主の指示や関与が認められるケース |
| 複数事業者への影響 | 同一荷主に関係する複数の実運送事業者で同様の違反が発生しているケース |
| 再発事例 | 過去の警告後も同様の違反が繰り返されているケース |
実際の適用事例としては、荷主による長時間の荷待ちの発生が違反原因行為として認定され、改善要請後も是正されなかったため、勧告が実施された事例が公表されています。
参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000348.html
参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001974517.pdf
8.まとめ
2026年現在の運送業法令遵守は、「法律を破らなければいい」という消極的コンプライアンスの段階を超越しています。2026年以降の物流業界における持続的競争優位は、コンプライアンス水準の高さによって確定しつつあります。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、運行記録計と連動した確実なデータ管理により、ホワイトな労働環境と安全運行の根拠を自動で蓄積し、荷主企業や社会に対して、自社のクリーンな運行実態を客観的数値で証明できる体制を構築します。システムによるコンプライアンス体制の改革をご検討の場合には、ぜひご相談ください。

